行政書士[過去問回答] -3ページ目

【A57】行政行為の附款

附款に関する問題である。附款の定義をもう一度確認しておきたい。
参考≫行政法入門(3)/行政行為の附款・瑕疵

1 附款については、法律上明文の根拠があることが
  多いが、附款を付し得るのは必ずしも明文の根拠
  がある場合に限られるわけではない。行政庁に裁
  量権が認められている場合にも附款を付すことが
  できる。
2 行政行為は、法律の定める目的を実現するために
  為されるものであるから、附款の内容も、その目
  的を実現するのに必要なものでなければならない。
3 附款が行政行為の本体と不可分一体の関係にある
  と解される場合には、附款の取消は行政行為全体
  の取消をもたらす。だから、附款のみの取消を求
  めることは許されない。
4 本肢は「負担」の説明になっている。
5 負担については、解除条件とは異なり、当該行政
  行為は、相手方がその義務に違反することにより
  当然失効するものではなく、撤回などがあって初
  めて失効することになる。

よって正しいものは
正解<5>
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【A56】行政行為の附款

行政行為の「附款」に関する問題である。「附款」とはなんぞや??

<附款>
附款とは、行政行為の効果を制限したり、あるいは特別な義務を課すため主たる意思表示に付加される行政庁の従たる意思表示(いわゆる、補足するための「つけたし」ですな!)

1 附款は主たる意思表示に付加されて表された
  意思表示であるから、附款を付すことができ
  る行為は、意思表示を要素とする法律行為的
  行政行為に限られることとなる。
2 主たる意思表示に付加して、特定の場合に行
  政行為を取り消したり、撤回したり権利を留
  保する附款として取消権の留保(撤回権の留
  保)が認められている。
3 行政行為の効力を制限する附款を付し得るの
  は、法律に明文の規定がある場合と行政庁に
  裁量権が認められている場合である。
4 附款には、主たる意思表示に付加して、行政
  行為の相手方に対し、これに伴う特別の義務
  を命ずる意思表示である負担があり、その例
  として、道路の占有の許可にあたり、占有料
  の納付を命ずることが上げられる。
5 行政庁の裁量権の範囲内で、附を付すことが
  できる。

よって誤っているのは
正解<4>
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【A55】行政行為の瑕疵

行政行為の瑕疵に関する問題である。行政行為の内容が客観的に法律に適合していれば、行政庁の意思表示に瑕疵があっても、必ずしも行政行為に瑕疵があるとはいえない。

1 行政行為には、民法の意思表示に関する規定(民法
  93条~96条)は適用されない(最判昭28.6.12)。
  無効な行政行為になるか、それとも取り消し得る行
  政行為になるかは、重大かつ明白な瑕疵があるか否
  かによって判断される(最判昭30.12.26)。
2 内容が不明確な行政行為は、無効な行政行為である。
3 処分庁は公益に適合した状態を回復するため、職権
  で取り消すことができる。
4 行政庁の錯誤によって行政行為を行った場合、客観
  的に適法である場合は、法治行政の原理に反しない
  から、その行政行為は無効とはならない。
  ※法治行政の原理
   行政活動がその担当者の恣意によってではなく、
   客観的な法にしたがって行われなければならない
   という一種の規範的要請
5 「瑕疵の治癒」とは、行政行為に違法なところがある
  が、その違法が軽微で、取消し事由とするに値しない
  と考えられる場合、またはその後の事情の変化で、欠
  けていた要件が実質的に補足されたと考えられる場合
  には、瑕疵は「治癒」されたものとして、その行政行
  為を適法とすることをいう。相手方の了承は必要とし
  ない。

したがって、正しいものは
正解<3>
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【A54】行政行為の瑕疵

行政行為の瑕疵(かし)に関する問題である。もう一度、「公定力」というものを確認しておきたい。

<公定力>
公定力とは、違法の行政行為であっても、当然無効の場合を別として、権限ある行政庁または裁判所の取消しのあるまでは相手方はもちろん第三者も他の国家機関もその行政行為を有効なものとして扱わなければならない効力である。
 そして、この違法の行政行為の効力を否定するには行政不服申立てまたは行政事件訴訟を提起することになる。

1 瑕疵が重大かつ明白な場合に限って認められるわけ
  ではない。
2 ある行政行為が、別の行政行為としてみると適法で
  あると見られる場合には、この行政行為は当初の処
  分を別の行政処分として適法と判断することができ
  る場合もある(違法行為の転換)
  (最判昭29.7.19)
3 原則として、行政上の法律関係の早期確定・安定維
  持のため、行政行為の瑕疵は、独立して問われるべ
  きで、違法性の継承は例外的に認められるに過ぎな
  い。
4 任期の定めのある公務員が任期満了後にした行為や、
  公務員となりえない者が公務員として行った行政行
  為は原則として無効である。ただし、行政法秩序の
  安定を図るために有効とされる場合がある。
  (最判昭35.12.7)
5 錯誤の場合、民法上は無効であるが、行政法上無効
  となるのは重大かつ明白な瑕疵がなければならず、
  錯誤があれば、常に無効とはならない。

よって正しいものは
正解<5>
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【A53】行政行為の取消と撤回


行政行為の「取消し」「撤回」についてコンパクトに纏められている問題である。いつも使っているテキストでもこの辺りは纏められているので、もう一度復習しておきたい。

1 行政行為が撤回された場合には、「訴求効」は
  ない。「将来効」のみが生ずる。
2 授権的行政行為を職権により取り消した場合、
  取消しの相手方に不測の損害を与える可能性
  が高いので、取消しは原則として許されない。
  ただし、相手方の既得権益を犠牲にしても取
  り消すだけの公益上の必要がある場合に限っ
  て職権取消が認められる(最判昭63.6.17)
3 行政行為に撤回権を留保する附款が付された
  場合、行政庁がその撤回権を行使するために
  は合理的な理由が必要である。無制限に撤回
  権を行使はできない。
4 行政行為の撤回は、処分庁のみが行える。
5 審査請求の裁決には、不可変更力が働く。

よって正しいものは
正解<5>
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【A52】行政行為の取消と撤回

行政行為の「取消」と「撤回」を比較して答えさせる(判断させる)問題である。つまづきやすい。ワタシの場合、「撤回」がイマイチ、どんなときにあるのか実例がないとわからないのだが・・・ 理論上はあるのだからなぁ

1 実定法上に補償を定める規定がない場合、類似
  の事例を基にして補償を認めている法律があれ
  ば、これを類推適用して補償を認めるのが憲法
  29条3項の主旨に合致するとしている。(最
  判昭49.2.5)地方自治法上でも補償の規定はな
  いが、国有財産法24条を類推適用し、補償を
  求めている。
2 不服申立その他の行政審判手続などの争訟裁断
  手続を経て行われた行政行為には不可変更力が
  認められるので、当該処分行政庁の取消は制限
  される。
3 処分行政庁が、職権により行政行為を取り消す
  場合には法的根拠は不要である。
4 行政行為の撤回は処分庁のみができる。「常に
  処分行政庁・監督行政庁のいずれも」がなしえ
  るわけではない。
5 行政行為が取り消された場合、その行為の効力
  は行為の発生時に遡って消滅する。

よって正しいものは
正解<3>
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【A51】行政行為の撤回

行政行為の撤回とは、成立時に瑕疵のない行政行為について、その後の事情の変化により、公益上その効力を存続させることができない新たな事由が生じた場合、将来に向かってその効力を失わせる行為をいう。

1 その成立において瑕疵があることを理由として
  効力を失わせるわけではない。
2 妥当である。
3 最判昭28.11.20は、法律上、特段の制限がない
  以上、前の行為に抵触する行政行為がなされる
  ことによって、前の行政行為が撤回されたもの
  と認められる、としている。
4 行政行為の撤回の効力は、既往に遡及しない。
5 運転免許の「取消し」制度は免許の取得時や更
  新時に運転免許の付与に瑕疵があることを通常
  予定はしていないので、この場合の「取消し」
  は講学上の「撤回」である。

よって妥当なものは
正解<2>
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【A50】行政行為の無効

この問題では行政行為の「無効」について考えたい。無効な行政行為については公定力が生じないのが基本である。

1 無効な行政行為には公定力は認められない。
2 判例では、「行政処分はそれが当該国家機関の
  権限に属する処分としての外観的形式を具有す
  る限り、仮にその処分に関し違法の点があった
  としても、その違法が重大かつ明白な場合であ
  るほかは、法律上当然無効となすべきではない」
  (最判昭31.7.18)
3 不可争力は公定力と同じように、行政の秩序維
  持のために認められているのであるから、無効
  な行政行為には認められない。だから、無効を
  主張するのに期間制限はない。
4 無効行為の転換に裁判官の宣言は必要とされな
  い。
5 行政行為には民法の意思表示に関する規定は適
  用されない(最判昭28.6.12)。よって、錯誤に
  よる漁業の免許は、「当然に無効」とはならな
  い。

よって妥当なものは
正解<5>
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【A49】行政行為の効力

行政行為の「効力」に関する最後の問題である。特に、「瑕疵がある場合」はどうなるのか、を復習しておきたい。

1 成立に重大かつ明白な瑕疵がある行政行為の
  効力は無効であり、公定力はない。
2 自力執行力の効果として、行政庁が義務の履
  行を矯正する際には法的根拠が必要となる。
3 不可争力は国民から行政行為の違法を争えな
  くなる効力であり、出訴区間の経過後といえ
  ども、行政庁は職権で取消しすることができ
  る。
4 不可変更力は、すべての行政行為に認められ
  るわけではない。不服申立てに対する裁決又
  は決定などに限って認められる効力である。
5 判例は、国家賠償請求訴訟の前に、あらかじ
  め処分取消又は無効確認の判決を得ておくこ
  とは必要ないとしている(最判昭36.4.21)。

したがって正しいものは
正解<4>
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【A48】行政行為の効力

「ことば」がスッキリしないなかなかイヤな問題であるが、一つ一つをシッカリと読めば、誤り部分が見えてくる。言葉に惑わされずに、しっかりと蓄積した知識を展開してみたい。

1 公定力は侵害的行政行為であっても、授益的
  行政行為であっても認められる。
2 強制執行を行うには、法的根拠が必ず必要で
  ある。
3 不可争力は、行政事件訴訟法上の出訴期間を
  または、行政不服審査法上の不服申立期間を
  経過した場合、国民の側からの申し立てはで
  きなくなる。
4 すべての行政行為には不可変更力が認められ
  るわけではない。また、処分に瑕疵がある場
  合には、原則として行政庁では職権で当該処
  分を取り消すことができる。
5 (最判昭31.12.26)裁決を覆して行った新た
  な裁決は、不可変更力に違反し違法である。
  しかし、これについても公定力が働くので、
  適法に取り消されるまでは、完全にその効力
  を有する。

よってただしいものは
正解<5>
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